「債務整理」リゾートクラブ会員権の預託金の返還請求

事前
事後
書面

主文

1 本件控訴を棄却する。
2 控訴費用は控訴人らの負担とする。

事実及び理由

第1 控訴の趣旨

1 原判決を取り消す。
2 被控訴人(株式会社北海道拓殖銀行)は,控訴人らに対し,次のとおりの金員を支払え(控訴人株式会社見附重機運輸(以下「控訴人見附重機」という。),控訴人丸北三建工業株式会社(以下「控訴人丸北三建」という。)及び控訴人Bを除く控訴人らの請求は,いずれも当審における減縮後のものである。)。
(1) 控訴人Aに対し,875万5362円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(2) 控訴人医療法人耕仁会(以下「控訴人耕仁会」という。),控訴人株式会社山田硝子店(以下「控訴人山田硝子」という。),控訴人株式会社シーエスコーレル(以下「控訴人シーエスコーレル」という。),控訴人株式会社ファミリーサービス(以下「控訴人ファミリーサービス」という。),控訴人太陽ルートサービス株式会社(以下「控訴人太陽ルートサービス」という。)及び控訴人株式会社カネトモ(以下「控訴人カネトモ」という。)に対し,各1532万1883円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(3) 控訴人破産者大同建材株式会社(以下「大同建材」という。)破産管財人C(以下「控訴人管財人」という。)に対し,1550万1437円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(4) 控訴人株式会社松原商会(以下「控訴人松原商会」という。)に対し,2232万1883円及びこれに対する平成7年4月1日から支払済みまで年5分の割合による金員
(5) 控訴人株式会社札幌デンタル・ラボラトリー(以下「控訴人デンタル・ラボ」という。)に対し,875万5362円及びこれに対する平成10年10月8日から支払済みまで年6分の割合による金員
(6) 控訴人株式会社丸清基礎工業(以下「控訴人丸清基礎」という。)及び控訴人エスアイ工業株式会社(以下「控訴人エスアイ工業」という。)に対し,各1532万1883円及びこれに対する平成10年10月8日から支払済みまで年6分の割合による金員
(7) 控訴人中和石油株式会社(以下「控訴人中和石油」という。)に対し,875万5362円及びこれに対する平成10年11月20日から支払済みまで年6分の割合による金員
(8) 控訴人株式会社丸吉ナカタ(以下「控訴人丸吉ナカタ」という。)に対し,1532万1883円及びこれに対する平成10年11月20日から支払済みまで年6分の割合による金員
(9) 控訴人萬木建設株式会社(以下「控訴人萬木建設」という。)に対し,875万5362円及びこれに対する平成10年12月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(10)控訴人りんかい日産建設株式会社(以下「りんかい日産建設」という。)に対し,1億2476万3909円及びこれに対する平成12年12月23日から支払済みまで年6分の割合による金員
(11)控訴人D承継人E(以下「控訴人D承継人」という。)に対し,875万5362円及びこれに対する平成13年4月20日から支払済みまで年6分の割合による金員
(12)控訴人株式会社メディタック(以下「控訴人メディタック」という。)に対し,1532万1883円及びこれに対する平成13年4月20日から支払済みまで年6分の割合による金員
(13)控訴人株式会社高橋測量(以下「控訴人高橋測量」という。)に対し,1752万4644円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(14)控訴人見附重機に対し,1606万9364円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(15)控訴人丸北三建に対し,1360万7028円及びこれに対する平成10年8月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
(16)控訴人Bに対し,113万2012円及びこれに対する平成10年12月4日から支払済みまで年6分の割合による金員
3 訴訟費用は第1,2審とも被控訴人の負担とする。
4 仮執行の宣言(ただし,控訴人松原商会を除く。)

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第2 事案の概要

控訴人らは,いずれも,会員制リゾートクラブである「エイペックスリゾート洞爺クラブ」(以下「本件クラブ」という。)の会員権(以下「本件会員権」という。)を購入したが,本件クラブ施設全体の完成に至らないうちに,本件クラブを経営していたエイペックス株式会社(旧商号「甲観光株式会社」,以下「エイペックス」という。)及び本件会員権の預託金返還債務を保証していた「たくぎん保証株式会社」(以下「たくぎん保証」という。)が,いずれも倒産した。
そこで,控訴人らは,他の本件会員権購入者らとともに,原審において,被控訴人に対し,預託金返還についての保証債務,損害担保債務等又は預託金債務そのものの履行として,もしくは不法行為に基づく損害賠償金として,預託金の全部又は一部の支払を求めたほか,一部の控訴人らが,被控訴人との間の提携ローン契約の錯誤無効を主張して,不当利得に基づき,本件クラブの入会金と預託金とを合算した金額の限度で提携ローンの既払分割金相当額の返還を求めたが,いずれの請求も棄却されたため,前記控訴の趣旨記載のとおりの裁判を求めて控訴した。
なお,本件では,原審において,他に本件会員権購入のため被控訴人が貸し付けた貸付金債権の譲渡を受けた株式会社整理回収機構と控訴人らを含む本件会員権購入者らとの間の貸金残金請求及びその不存在確認請求反訴の訴えについての弁論も併合されたが,株式会社整理回収機構との関係においても,控訴人らはいずれも敗訴した。
そして,原判決を不服として,控訴した控訴人らを含む42名のうち,20名については,いずれも裁判上の和解又は訴えの取下げ若しくは控訴の取下げによって訴訟が終了し,控訴人らと被控訴人との間の訴訟のみが残されるに至った(したがって,本判決が対象とする事件の原審における事件番号は,平成10年(ワ)第1274号,第1586号,第2386号,第2712号,第2809号,平成12年(ワ)第2975号,平成13年(ワ)第118号,第633号である。)。また,控訴人らの当審における請求の減縮は,いずれも,当初の請求額からたくぎん保証の破産手続における配当金相当額を控除したことによるものである。
1 争いのない事実及び各項掲記の証拠から容易に認められる事実
(1) 当事者等について
ア 被控訴人について
被控訴人は,明治32年12月25日,北海道拓殖銀行法に基づいて設立され,昭和25年に普通銀行に転換し,昭和30年には都市銀行に加入した銀行であるが,平成9年11月,経営破綻に陥った旨公表し,平成10年6月26日開催の株主総会において,営業譲渡及び解散の特別決議をして,平成11年3月31日に解散した。
(甲1,5,121)
イ たくぎん保証について
たくぎん保証は,被控訴人の一般顧客に対する住宅ローンの返還債務の保証を主たる目的として,昭和52年5月2日に設立された(設立時の出資比率は,被控訴人及び被控訴人のグループ会社が69.5パーセントを占めていた。)株式会社であり,その業務収益のほとんどが被控訴人から寄せられる保証案件によって占められていたが,平成3年1月4日,エイペックスとの間で,エイペックスが本件クラブの会員に対して負う本件会員権の預託金返還債務を保証する旨の保証委託契約(以下「本件保証契約」という。)を交わした。
本件保証契約の要旨は,たくぎん保証の保証限度額を総額で532億円とし,既に本件クラブに入会済みの会員に対する預託金返還債務についても保証の対象とし,たくぎん保証は,毎月末日
現在の保証残高につき年0.4パーセントの割合による保証料を得るというものであった。
また,たくぎん保証は,平成4年12月4日,エイペックスほか2社から,極度額250億円の根抵当権の設定を受けた。
ところで,いわゆるバブル崩壊後,たくぎん保証が被控訴人との間で保証していた被控訴人の融資債権について延滞が多発するようになり,平成6年度以降の被控訴人からの求償債権の残高は,いずれも360億円台から380億円台で推移し,しかも,徴求担保物件による保全不足の状態が慢性化し,被控訴人に対する代位弁済資金を被控訴人からの借入金で充てざるを得ない状態に陥った。
そして,前記被控訴人の経営破綻が公表された後は,被控訴人からの新規保証案件が途絶えたため,保証料収入も途絶え,さらに,被控訴人からの融資も止められたことから,平成10年1月末現在で約293億円の債務超過に陥り,同年3月18日,札幌地方裁判所に対し,破産を申し立て,同日,破産を宣告された。
なお,たくぎん保証の破産債権者(一般債権者)のうち,本件会員権の預託金返還請求権を有する者は,508名(個人70,法人438)で,その保証対象となる債権(後記エイペックスの破産により,保証債務の履行期が到来した。)総額は,174億円であった。
また,たくぎん保証の発行済み株式のうち,被控訴人及びそのグループ会社以外の生命保険会社等が引き受けていた株式については,たくぎん保証の平成6年度の損益が赤字となることが判明したことから,平成7年3月25日,たくぎんリース株式会社に全株譲渡され,上記破産宣告時のたくぎん保証の株式は,すべて,被控訴人及びそのグループ会社が保有していた。
(甲2,5ないし7,30の4・9・12,31の2・3・6・7・11・14ないし19)
ウ エイペックスについて
エイペックスは,昭和54年11月21日に設立され(平成5年3月19日に旧商号の甲観光株式会社から現在の商号に変更された。),カブトデコム株式会社(以下「カブトデコム」という。)を支配株主として本件クラブの経営に当たり,本件クラブの主要施設であるホテル開業(開業したのは平成5年6月)前の平成2年3月から第1次賛助(縁故)会員(1口2000万円で,募集口数240口)及び第2次賛助会員(1口2500万円で,募集口数は180口)を募ったほか,たくぎん保証との間で本件保証契約を交わした平成3年1月から一般会員の募集を開始した。
また,エイペックスは,一般会員の募集に先立って複数回にわたって増資を実施し,設立当初の資本金500万円は,平成2年9月までの増資によって71億6500万円に増額されていた。
本件会員権の販売についての当初の予定は,次のとおりであった。
会員種別   入会金   預託金   販売口数  販売総額
第1次賛助会員 400万円 1600万円 240口  48億円
第2次賛助会員 500万円 2000万円 180口  45億円
第1次正会員 700万円 2800万円 880口 308億円
第2次正会員 960万円 3840万円 550口 264億円
合計   1850口 665億円
しかし,平成3年における第1次正会員の販売は振るわず,被控訴人も本件会員権の販売促進を勧誘協力等の方法で支援したものの(この勧誘協力の具体的内容や評価については,後記のとおり争いがある。),同年9月には,第2次正会員の募集を中止した。
なお,本件会員権の販売実績として後日確認されたものは,1285口で,そのうち231口は,カブトデコムのもとに滞留していたため,外部からの一般資金獲得には至っていなかったのみならず,カブトデコムを通じて外部に販売された本件会員権の代金がカブトデコムからエイペックスに還流されないまま処理されたり,販売済みの会員権購入者が被控訴人から借り入れた220口分の提携ローン分約60億円についての肩代わり返済(代位弁済)を余儀なくされるなどしたことから,平成5年6月のホテル開業後,カブトデコムが有していたエイペックスの株式が譲渡担保権の実行によって被控訴人に移転してからも収益は改善しないまま推移し,被控訴人からの借入金に依存する状態(平成6年3月までの被控訴人からの借入金残高は496億円に達していた。)が続く中で,平成9年11月に被控訴人の経営破綻が公表され,また,本件会員権の預託金返還請求権を保証していたたくぎん保証の資産状況も危殆に瀕する状態となった。
こうしたことから,エイペックスもまた,たくぎん保証と同日に破産を申し立て,破産宣告を受けた。エイペックスの破産手続における平成10年7月8日現在の届出債権者のうち,本件会員権購入者は445名で,届出債権の総額は約172億2400万円であった。(甲3,8ないし10,22の1ないし3,61,80,81,88,89,94)
エ カブトデコムについて
カブトデコムは,昭和46年4月1日に設立された土木建築工事請負等を目的とする株式会社であるが,同種会社との数次の合併を経て,昭和63年9月1日,現在の商号に変更した。
カブトデコムは,昭和60年ころから,被控訴人との間における取引関係が深まり,昭和62年3月から,被控訴人を主要取引銀行(いわゆるメインバンク)として,被控訴人から他の金融機関に対する既存債務の肩代わり融資を受け,平成元年3月には,日本証券業協会に店頭登録され,平成2年及び平成3年の2度の増資によって,資本の額は,483億3609万3403円にまで増加し,事業規模においても北海道内で屈指の企業に成長した。
被控訴人は,いわゆる中堅企業育成路線の対象会社としてカブトデコムを選定し,上記増資のための多額の資金を融資するなど積極的な支援を展開したが,平成4年半ばころから支援の見直しを進め,平成5年半ばころ以降は,カブトデコムとの信頼関係が急速に失われるようになり,同年10月には,カブトデコムに対する支援を打ち切った。
(甲4,41ないし45,61,64の1・2,106,109,115)
(2) 控訴人らによる本件会員権取得について
控訴人らが取得した本件会員権の種類・各申込日・各預託金証書(会員資格保証金証書)の発行日及び会員権購入代金の支払方法は別紙本件会員権一覧表のとおりである。ただし,控訴人りんかい日産建設の賛助会員会員権2口及び正会員権5口は,他者が既に購入していた会員権を被控訴人の経営破綻が公表される前に譲り受け,その後の平成10年1月8日付けで名義書換を行ったものであり(甲A13の1の3ないし9),控訴人りんかい日産建設が当初から取得した本件会員権は,正会員権2口で,その入会申込時期は,平成3年3月ころであった。また,控訴人Dは,原審継続中の平成13年10月12日に死亡し,控訴人D承継人が控訴人Dの訴訟を単独で承継した(原審における控訴人D承継人本人)。
なお,平成2年中に発行された賛助会員権についての預託金証書には,各発行日にたくぎん保証の保証文言の記載のないものがまず発行され,平成3年3月以降に,たくぎん保証の保証文言が記載された証書(発行日は従前どおり)が改めて発行された(甲B5の4,乙66,67)。
(3) たくぎん保証の破産手続における配当について
控訴人らに対しては,たくぎん保証の破産手続における配当によって,預託金債権額の約45.27パーセントの配当が実施された(争いがない)。
(4) 控訴人らから被控訴人に対する各請求の遅延損害金起算日及び遅延損害金の利率は次のとおりである。
ア 控訴人A,控訴人耕仁会,控訴人山田硝子,控訴人シーエスコーレル,控訴人ファミリーサービス,控訴人太陽ルートサービス,控訴人カネトモ,控訴人高橋測量,控訴人見附重機,控訴人丸北三建及び控訴人管財人
訴状送達の日の翌日である平成10年8月4日からの商事法定利率年6分の割合による遅延損害金
イ 控訴人松原商会
平成7年4月1日から民法所定の年5分の割合による遅延損害金
ウ 控訴人デンタル・ラボ,控訴人丸清基礎及び控訴人エスアイ工業
訴状送達の日の翌日である平成10年10月8日からの商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金
エ 控訴人中和石油及び控訴人丸吉ナカタ
訴状送達の日の翌日である平成10年11月20日からの商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金
オ 控訴人萬木建設及び控訴人B
訴状送達の日の翌日である平成10年12月4日からの商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金
カ 控訴人りんかい日産建設
訴状送達の日の翌日である平成12年12月23日からの商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金
キ 控訴人D承継人及び控訴人メディタック
訴状送達の日の翌日である平成13年4月20日からの商事法定利率
年6分の割合による遅延損害金
2 争点(なお,以下のうち(1)ないし(10)は,原審からの争点であり,(11)及び(12)は,当審における新たな争点である。)
(1) 被控訴人の契約責任の有無
(控訴人らの主張)
被控訴人は,控訴人らに対し,本件クラブへの入会勧誘又は提携ローン契約締結に際して,本件会員権の預託金返還債務を保証する旨約し,あるいは,預託金相当額の範囲内において損害を担保する旨約した。
すなわち,以下の事情に鑑みるならば,被控訴人は,たくぎん保証による保証契約とは別個に,本件会員権を購入した控訴人らとの間で預託金返還債務の保証又は損害担保契約を締結したと解すべきである。
ア 本件クラブ施設の建設及び運営事業(以下「本件事業」という。)及び本件会員権の販売は,被控訴人とカブトグループの共同事業であり,被控訴人は自己の事業として本件事業及び本件会員権の販売に関与していた。
すなわち,被控訴人は,カブトデコムの本件事業計画を全面支援することとし,その意向により事業計画の規模を当初予定の10倍近い665億円という規模に膨張させ,事業計画の全部門にわたり自己の関連会社を関与させ,企画立案業者及び建築業者の双方について,自己の意向に沿う業者を選定させ,本件事業計画の公表も,カブトデコムと連名で行った。
そして,被控訴人は,本件会員権の販売を是非とも成功させるため,専用の提携ローンを用意し,入会金及び預託金に充てる資金をほとんど無審査で本件会員権購入者に融資したほか,自己の支配するHCBグループに会員募集業務を行わせ,被控訴人の各支店にも,本件会員権の募集実績を各支店の営業成績評価に加味するなどの見返りのもと,各支店役職者が募集に全面的に協力するよう指示した。
イ 被控訴人は,自己の関連会社であるたくぎん保証にエイペックスの預託金返還債務の保証を引き受けさせたが,この保証が実質的には被控訴人による保証であると認識していた。
すなわち,たくぎん保証による預託金返還債務の保証は,本件会員権の販売を促進するための方策の一つであるが,本件クラブの立地に魅力が乏しく,会員権価格が異常に高額であるなどの状況の中で,本件会員権の唯一のセールスポイントは,被控訴人の信用力を利用した保証であった。
そして,被控訴人は,平成元年10月13日には,投融資会議において,本件会員権の販売のため,エイペックスの預託金返還債務を保証することを決定したが,旧大蔵省から,銀行が保証業務を行うことについて注意を受けたため,たくぎん保証が保証することにした。
したがって,被控訴人は,形式的にたくぎん保証が保証することとしたものの,実質的には,被控訴人が保証する旨認識していたのは明らかである。
また,たくぎん保証は,被控訴人とは別個の法人であるが,その株式すべてを被控訴人とその系列会社の合計6社で保有し,その役員のほとんどは被控訴人における役職経験者であり,その従業員もほとんどが被控訴人からの出向者,転籍者又は被控訴人の退職者であるなど,資本関係や人事面において被控訴人と一体であった。
そして,たくぎん保証は,保証案件のほとんどが被控訴人の実行する融資の保証引受で占められ,自ら開拓した案件は全くなく,代位弁済資金等の事業資金についても,ほぼ全面的に被控訴人からの借入れに依存するなど,営業・財務の両面で被控訴人に依存していた。
したがって,たくぎん保証自身には,エイペックスの預託金返還債務について保証債務の履行請求が殺到した場合,これを支払う能力はなかったが,被控訴人から保証引受を要請されて,被控訴人との力関係からこれを断ることができず,償還不能となった場合には被控訴人の支援を得ることを期待して,預託金返還債務の保証を引き受けた。
被控訴人も,たくぎん保証の支払能力不足を認識しながら,万一の場合には,償還資金を自ら融資する予定のもと保証引受を要請し,自ら,この保証業務における保証料の利率を契約金額の0.4パーセントと決め,更にその4分の3を,保証契約の内容等についてのコンサルティング料として取得していた。
被控訴人は,たくぎん保証をいわば自らの保証機関と認識し,本件の保証業務も自己の事業として行ったものである。
上記コンサルティング料は,実質的には,預託金返還債務の保証料であるか,又は本件会員権の購入者に対する損害担保債務と対価的牽連関係に立つものというべきである。
ウ 以上のような状況下で,被控訴人は,平成元年には,預託金返還債務の保証を決定し,本件事業計画のうち第1次工事計画に関し,カブトデコムとの間で,「会員権の元本債務を保証すること」を合意し,平成元年10月,同社代表者であったGに対し,本件預託金については「被控訴人が保証する」と通知し,同年12月,日経金融新聞の取材を受けた際,本件会員権の元金償還を被控訴人が保証する旨述べた。
また,エイペックスとカブトデコムが作成した本件クラブ賛助会員の募集要綱案には,「当リゾート会員権は日本で初めて会員権資格保証金の元金償還を銀行が保証する,預託金制度のリゾート会員権です」「預託時から据置期間満了後1年間は株式会社北海道拓殖銀行が元金償還を保証いたします」との各記載があり,被控訴人は,同文書にかかる記載がなされることについて了解していた。
さらに,被控訴人の役員自ら,財界人の会合の席上において,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨対外的に宣伝し,たくぎん保証が保証業務を行うことが決まった後も,被控訴人の従業員が,入会募集及び提携ローンの申込みを受ける際などに,「甲観光が倒産しても,拓銀が保証するから大丈夫である」「たくぎん保証が保証するということは,拓銀が保証するのと同じである」などと言って,契約を締結させた。
被控訴人の従業員から前記のような説明を聞いた控訴人らは,被控訴人が将来経営破綻を来すなどとは思いもよらず,被控訴人が預託金返還債務を保証するので,将来預託金の全額償還が受けられると信じて本件クラブに入会した。
仮に,被控訴人において自ら保証する意思がなかったのであれば,被控訴人としては,被控訴人が本件預託金返還債務を保証していないこと,たくぎん保証は被控訴人とは全く別会社であり,たくぎん保証は破産する可能性があるが,被控訴人の債権者が債務の履行を受けられても,たくぎん保証の債権者は履行を受けられないことがあり,同社による保証を被控訴人による保証と同一に考えてはいけないという正確な情報を新聞,テレビ等の広告を利用して流し,虚偽の情報を訂正すべきであったにもかかわらず,これをしなかった。
なお,被控訴人のF常務は,たくぎん保証による保証を決定する際,カブトデコム代表者のGに対し,たくぎん保証はあくまでも事務手続上の契約者であり,実質は被控訴人が保証するものである旨説明し,以後もカブトグループ担当者は,そのように説明して会員を募集していた。
エ 控訴人らのうちには,入会に先立ち,たくぎん保証の保証を明記したパンフレットを受領した者もいるが,そのような細かな記載まで熟読することはないのが通常であり,そもそも上記パンフレットの配布を受けていない控訴人らもいた。
また,たくぎん保証が保証する旨の新聞報道もされたが,かかる報道は周知性に乏しく,前記の説明によって形成された認識をうち消すようなものではなかった。
なお,控訴人らのうちには,たくぎん保証が保証する旨の説明を受けた者もいたが,法律家ではない控訴人らが,経済的実質は被控訴人の保証であると聞いて,被控訴人が法的にも保証するものと認識したのは当然であった。
控訴人らは,たくぎん保証の保証文言付きの預託金証書が交付されたとき(そもそも,同証書の交付を受けない者もいた。)にも,預託金証書の記載を見なかった者もいる上,同記載を見た控訴人らも,あらかじめたくぎん保証は被控訴人と同一であるなどと説明を受けていたため疑問に思わなかったり,これを疑問に思って被控訴人に問い合わせたが,同様の説明を受けて納得したりしたものであるから,被控訴人に対し特段の抗議・苦情を寄せていないからといって,控訴人らにおいて,被控訴人が保証せず,たくぎん保証が保証することで納得していたことにはならない。
また,被控訴人は,賛助会員は,金融機関の保証が正式決定していない旨文書により通知を受けていたから,被控訴人が保証すると信じるはずがないと主張するが,この文書を受け取っていない賛助会員もいる上,同通知の内容も,金融機関の保証がなされる予定であるが,最終的な決定が遅れているという趣旨のものに過ぎず,控訴人らに対し,被控訴人が保証しない旨認識させ得るようなものではなかった。
ところで,被控訴人は,銀行が保証(支払承諾)をする際には必ず書面を作成し,口頭で保証契約又は損害担保契約をすることはあり得ないと主張するけれども,本件においては,被控訴人は,従来からのカブトデコムに対する過剰融資の回収のため,本件事業計画にも深く関与せざるを得なくなり,更に本件事業計画のため多額の資金の融資もしたため,本件会員権を高額で販売するほかなく,かつ,そのためには預託金返還債務について信用ある機関による保証が不可欠であったという特殊事情があったのであり,通常の業務における一般論は本件に妥当しない。
さらに,被控訴人は,控訴人らが本件クラブに入会した動機は,取引上の便宜を受けるなど様々であり,被控訴人による保証は決定的動機でないと主張するけれども,控訴人らに様々な動機があったにせよ,北海道内において入会金700万円,預託金2800万円という異常に高額な会員権の購入はリスクが極めて高く,控訴人らは,当時絶大な信用のある被控訴人が保証する旨の説明を受けたからこそ,本件会員権を購入したのである。
オ 被控訴人は,会員契約締結前の募集の段階においては,主たる債務さえ発生するか否かが不確定なものであるから,その段階で保証契約又は損害担保契約が成立することはあり得ないと主張するけれども,会員募集段階においても,条件付きの保証契約又は損害担保契約が有効に成立し得る。
本件においては,保証契約における主たる債務である預託金返還債務は特定しており,損害担保契約における損害の原因となる債務関係とその当事者も特定しているから,各契約とも内容は特定しており,有効に成立する。
カ 以上のとおり,被控訴人は,実質的に被控訴人が保証するという認識に基づいて,本件クラブ入会希望者に対し,これに沿う説明をすることにより,保証又は損害担保の申込みをし,本件クラブに入会した控訴人らも,被控訴人の従業員の説明を聞いてその旨認識し,この申込みを承諾したのであるから,たくぎん保証との間の保証契約とは別個に,被控訴人との間で,保証契約又は損害担保契約が締結された。
(被控訴人の主張)
被控訴人と控訴人らの間には,保証契約,損害担保契約のいずれも成立していない。
ア 被控訴人,たくぎん保証及びエイペックス三者間の契約関係は,エイペックスがたくぎん保証に対し,預託金返還債務の保証を委託し,エイペックスが被控訴人に対し,控訴人らが本件会員権購入のため被控訴人から借り入れた資金の返還債務を連帯保証した,ということに尽き,被控訴人とエイペックスの間には,保証委託関係は存在しない。
イ 被控訴人には,控訴人ら主張の保証又は損害担保の意思は全くなかった。銀行が債務保証(銀行実務上,支払承諾という。)をする際,主債務者との間で保証委託契約の書面を作成し,債権者に対し保証書を交付するのが,銀行取引実務上必須の手続であって,口頭で契約を締結することはあり得ない。被控訴人が損害担保契約という異例の契約を締結するのであれば,なおさら契約の書面化等の手続を踏むはずである。
本件では,被控訴人と控訴人らの間には何らの契約書面もないことからして,被控訴人は,控訴人らとの間に何らの契約を締結する意思がなかったことは明らかである。
ウ エイペックスの預託金返還の据置期間が経過し,返還請求が一時に殺到した場合には,たくぎん保証にこれを全額償還する資力はなかったが,たくぎん保証の支払が不能となると被控訴人の信用が失墜するので,被控訴人は,たくぎん保証に償還資金を融資してでも預託金の保証債務を履行させる予定であった。
しかし,このことと,被控訴人自身が預託金返還債務を保証したか否かとは全くの別問題である。
エ 被控訴人関係者であるとカブトグループの関係者であるとを問わず,控訴人らに対し,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨述べたことはない。
被控訴人は,平成元年中から本件クラブの預託金返還債務につき,保証を行うことを計画したが,旧大蔵省と協議をしたところ疑義が示され,平成2年7月に至り,たくぎん保証が預託金返還債務の保証をすることで同省の了解を得たため,同年12月,投融資会議において,たくぎん保証の保証を決定し,その事実はカブトデコムによりマスコミを通じて報道もされ,第1次正会員の募集開始までには,たくぎん保証が保証することで関係者の方針が統一された。
この間,エイペックスは,平成2年3月から第1次,第2次賛助会員の募集を開始していたが,賛助会員に対し,預託金保証については正式決定がない旨報告し,保証文言のない預託金証書
を交付しており,平成3年1月からの第1次正会員に対し,たくぎん保証の保証文言付きの預託金証書を交付するとともに,賛助会員に対しても,たくぎん保証が保証する旨を改めて通知し,たくぎん保証による保証文言付きの預託金証書を再交付した。
また,カブトデコム及びエイペックスが平成3年1月ころ作成した会員募集用のマニュアル的な問答集にも,たくぎん保証が預託金返還債務を保証するとのみ記載されており,被控訴人が実質的に保証する旨の記載はない。
以上のとおり,たくぎん保証の保証が決定する前は,被控訴人の従業員であると,カブトグループの募集担当者であるとを問わず,預託金返還債務の保証人は正式決定前であるから,軽々しく被控訴人が保証するなどと説明することは考えられない。
また,この正式決定の後においては,既にたくぎん保証が保証機関となることで被控訴人及びカブトグループの方針は統一されており,預託金証書にもたくぎん保証の保証文言が明記されている以上,担当者が,あえて,被控訴人が保証する,あるいは実質的には被控訴人が保証するなどと述べることはない。
オ 控訴人らは,被控訴人の従業員らの説明により保証又は損害担保の申込みがあったと主張するけれども,これらは単なる契約の勧誘であって,控訴人らが本件クラブに入会しない以上,主債務である預託金返還債務が発生するか否かも不確定だったのであるから,保証等の申込みと評価することはできない。
むしろ,控訴人らは,本件クラブ入会の申込みとともに預託金返還債務の保証の申込みをし,エイペックスの入会承諾とともに保証人が保証を承諾したことにより保証契約が成立し,預託金証書により保証契約の成立を証したのであるから,保証契約の相手方は,預託金証書に記載されたたくぎん保証というべきである。
さらに,賛助会員の預託金については,入会後平成3年1月まで保証人はおらず,同月に至って初めてたくぎん保証の保証文言を記載した預託金証書が交付されたのであるから,被控訴人が
保証を承諾する余地はなかった。
カ 控訴人らは,ほとんどが営利法人又はその役員であり,保証業務や銀行業務を理解し,契約における取引判断においても通常人より優れている。
また,控訴人ら,特に,カブトグループ及びカブトデコム代表者Gと繋がりの深い賛助会員(特別縁故会員)の本件クラブへの入会動機は,見返りとしてカブトグループからの受注を期待した者,会員権の値上がりを見込んで投資目的で入会した者,従業員の福利厚生施設としての利用を目的とした者など様々であって,被控訴人の保証は購入動機の決定的なものではなかった。
第1次正会員は,あらかじめたくぎん保証が預託金返還債務を保証する旨明記されたパンフレットを受領した上入会しているが,前記のとおり判断能力を有する控訴人らが,保証の主体を被控訴人であると誤認することはあり得ないし,控訴人らの中にも,たくぎん保証の保証文言付きの預託金証書を受け取り,記載内容を確認している者がいるのに,被控訴人に対し,特段抗議が寄せられたことはない。
さらに,賛助会員については,当初は預託金証書に保証文言が記載されておらず,後にたくぎん保証の保証文言付きの預託金証書と引き換えられたにもかかわらず,保証人がいないとか,保証人が違うといった抗議・苦情が寄せられたことはない。すなわち,控訴人らは,事前に被控訴人が保証する旨の説明を受けていなかったため,これに沿う預託金証書の記載を見て納得していた。
(2) 外観法理又は禁反言に基づく被控訴人の保証責任の有無
(控訴人らの主張)
ア 控訴人らの中には,被控訴人の従業員又は役員から直接,被控訴人が保証する旨告げられなかった者もいる。
しかし,被控訴人は,本件クラブの企画立案段階から主体的に本件事業計画に関与し,会員権の募集についても,頭取が全面的な関与,協力を表明し,各支店にも販売協力を指示し,当時のF常務がカブトデコム代表者のGと密接な関係にあり,被控訴人としてもカブトグループに多額の融資をした上,従業員をカブトデコムに派遣するなど密接な関係を持ち,上記の従業員派遣の事実は新聞報道までされた。本件事業計画及び本件会員権販売(募集)の事務局は被控訴人本店内に設置され,エイペックス及びカブトデコム社員が出勤して被控訴人社員とともに業務を行っていた。
このような状況下で,被控訴人は,平成元年10月ころ,Gに対し,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨通知し,同年12月には日経金融新聞の取材に対し,本件会員権の元金償還を被控訴人が保証する旨述べ,同月20日には同旨の記事が掲載された。
また,エイペックスとカブトデコムが作成した本件クラブの賛助会員の募集要綱案には,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨が記載され,カブトグループは,被控訴人が預託金返還債務を保証すると言って会員を勧誘していたが,被控訴人は,これらのことを了解していた。
以上のように被控訴人が預託金返還債務を保証する旨の情報が流布しており,現に控訴人らは,会員募集を行っていたカブトグループの従業員から被控訴人が預託金返還債務を保証する旨聞いたり,又は被控訴人の従業員からその旨を聞いた者からこれを伝え聞いたりした。
イ そして,被控訴人は,内部において前記のとおり会員権の販売に対する協力態勢をとり,前記のような新聞報道がなされていること等も知っていたから,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨の事実と異なる情報が世間に流布し,控訴人らが,その旨信頼することを認識できたのに,被控訴人の役員や従業員は,被控訴人が預託金返還債務を保証するかのような言動をするなどして,前記のような情報が流布する原因を作り,これを訂正しようとしなかった。
被控訴人と消費者との間では,情報の量及びその真偽を判断する能力に差がある以上,被控訴人には,前記のような事実に反する情報の流布を防ぎ,既に流布した情報を訂正する義務があるのに,被控訴人の担当者は,入会募集の際はもとより,提携ローンに関与した際にも,これを訂正しなかったものであるから,被控訴人と控訴人らとの間には,控訴人らの信頼した内容に従った保証契約が成立するというべきである。
ウ また,銀行は,その救済に公的資金が投入される公的存在であるから,その信用の維持が要請されるところであり,当該銀行の信用を利用した虚偽の情報が流布した場合には,広告媒体等を通じて,情報を訂正すべき義務を負う。
本件においては,被控訴人は,被控訴人がたくぎん保証と一体であり,預託金保証債務が履行されなくなるようなことはないとの情報が流布されているのを知りながら,これを訂正する義務を怠ったから,控訴人らの信頼した内容に従った保証契約が成立する。
(被控訴人の主張)
被控訴人の役員,従業員や,募集代理店であるカブトデコム及びグループ企業の担当者が,被控訴人が保証するなどと述べたことはなく,また,控訴人らが主張する事実関係のもとで,被控訴人に情報訂正義務が生じるとは解されない。
すなわち,控訴人らが被控訴人に対し,情報の真偽を確認することは容易なことであって,被控訴人のみに情報訂正義務を負わせるのは不当である。
(3) 代理,第三者のための契約又は表見代理に基づく被控訴人の保証責任又は損害担保責任の有無
(控訴人らの主張)
ア 代理人による契約又は第三者のための契約に基づく被控訴人の責任控訴人らの中には,カブトグループの担当者の募集に応じて入会した者もいるが,カブトグループの担当者は,被控訴人が預託金返還債務を保証し又は損害を担保する旨説明していたし,被控訴人もかかる販売方法を認めていた(本件事業計画及び会員権販売事業の事務局は被控訴人本店内に設置され,エイペックス,カブトデコム及び被控訴人の社員が毎日出勤してこれらの業務を行っていた。)。
こうしたことからすると,上記控訴人らは,代理人により被控訴人との間で前記の保証契約又は損害担保契約を締結したか,又は,入会者のためにエイペックスの負う預託金返還債務を被控訴人が保証又は損害担保する旨の被控訴人とカブトデコムの合意(第三者のためにする契約)を前提として,控訴人らが入会の際受益の意思表示をしたことにより,被控訴人に保証債務又は損害担保債務が生じたというべきである。
イ 表見代理に基づく被控訴人の責任
被控訴人は,平成元年10月ころから平成3年までの間に,カブトデコムに対し,被控訴人の提携ローンについて,取次ぎ等の事務を委託した。
そして,カブトデコム代表者又は従業員は,本件クラブ会員の募集の際,控訴人らに対し,被控訴人が,エイペックスの負う預託金返還債務を保証する旨説明し,控訴人らを本件クラブに入会させた。
以上により,カブトデコムは,事務委託契約に基づく被控訴人の基本代理権を有していたところ,控訴人ら本件会員権の購入者は,入会(本件会員権購入)の際,カブトデコムの代表者又は従業員が,被控訴人を代理して保証契約(又は損害担保契約)を締結する権限を有すると信じた。
被控訴人は,カブトグループがかかる募集方法を取っているのを知りながら放置し,控訴人らの問合せに対し,保証を否認することは一切なく,したがって,控訴人らには上記のとおり信じることにつき正当な理由があった。
したがって,被控訴人は,控訴人らに対し,民法110条により,保証契約(又は損害担保契約)に基づく義務を負うべきである。
(被控訴人の主張)
ア 被控訴人が,カブトグループによる控訴人ら主張のような募集方法を認めたことはない。
イ また,平成3年1月には,カブトデコムがたくぎん保証による保証をマスコミ発表している。
被控訴人の従業員であるとカブトグループの担当者であるとを問わず,控訴人らに対し,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨述べたことはなく,保証又は損害担保を約したこともないこと,募集段階における説明が保証又は損害担保の申込みと解し得ないことなどは既に述べたとおりである。
(4) 被控訴人の完成保証契約又は損失保証契約の成否
(控訴人ら(ただし,控訴人松原商会及び控訴人管財人を除く。)の主張)
ア 被控訴人は,本件事業計画の初期の段階から深く関わり,リゾート施設の内容やそれに連動する会員権価格も被控訴人の主導で決定された。
更に,被控訴人が人,物,金のすべてで支配しているたくぎん保証に預託金返還債務を保証させ,提携ローンも作り,自行の行員に本件会員権を販売させた。
その販売の過程で,「拓銀が全面支援する」とか,「保証する」とか,「実質拓銀の事業」などと発言していた。このような発言を聞いた者は,被控訴人が少なくともこのリゾート施設を完成させるものと考える。
被控訴人の代表取締役らにおいても,そのような認識を有していたからこそ,本件事業を完成させ,本件会員権が紙切れになるのを防ごうとしたのである。
イ したがって,被控訴人と控訴人らとの間で,被控訴人が本件事業を完成させる義務(この義務には,単に施設を完成させるだけでなく,運営を軌道に乗せる義務も含む。)を負担し,この義務を履行できなかった場合には,会員権購入代金相当額の損害賠償義務を負うというべきである。
(被控訴人の主張)
控訴人らの主張にかかる被控訴人による本件事業完成保証契約又は損失保証契約の成立は争う。
(5) 被控訴人の保証責任の存否(たくぎん保証との関係における法人格の否認)
(控訴人らの主張)
前記争点(1)の事情に照らすと,被控訴人が,たくぎん保証と法人格が別個であることを主張して保証責任を否認することは,たくぎん保証の法人格を濫用して,不当に保証責任を免れ,たくぎん保証の債権者を害しようとするものである。被控訴人が,エイペックスの負う預託金返還債務について保証責任がないと主張することは,信義則に反し許されないとともに,法人格否認(法人格の濫用)の法理によっても,被控訴人は,保証責任を負うべきである。
(被控訴人の主張)
法人格の濫用としてその背後の支配株主に対する権利行使が認められるためには,いわゆる支配要件,目的要件の両者を満たす必要がある。
しかし,被控訴人は,たくぎん保証とその主たる業務(保証引受)について密接な関係はあったが,たくぎん保証の意思決定は同社の経営陣独自の経営判断に基づくもので,被控訴人の意のままに動かされるものではなかったから,支配要件を満たさない。
また,本件は,目的要件の具体例として挙げられる法の潜脱目的,契約回避の目的,第三者詐害の目的のいずれもないから,目的要件も満たさない。
控訴人らは,銀行である被控訴人が自ら保証業務を行えないため,たくぎん保証に預託金返還債務の保証を引き受けさせたとし,被控訴人に法を潜脱する目的があったかのようにいうが,銀行法上,銀行も保証(支払承諾)業務は適法に行えるから,被控訴人には法を潜脱する理由はない。
(6) 本件事業が被控訴人,カブトデコム及びエイペックスを共同企業体(民法上の組合)とする共同事業であることに基づく被控訴人の預託金返還義務の存否
(控訴人ら(ただし,控訴人松原商会及び控訴人管財人を除く。)の主張)
被控訴人は,カブトデコムのメインバンクとして当初から本件事業計画に参加し,自らの主導によりその事業内容を高級路線に変更し,本件事業計画の記者発表の際には被控訴人の常務取締役を出席させ,本件事業のプランニングや建設業者の選定に関わった。
そして,被控訴人は,自己の支配下にあるたくぎん保証に預託金返還債務を保証させるとともに,提携ローンを設定し,被控訴人の従業員に会員権の販売に当たらせた。
被控訴人は,本件事業遂行のため本店3階の内部に事務局を設け,総合開発部の職員をしてカブトデコムやエイペックスの社員らとともに作業を行わせた。
被控訴人自身,本件事業はカブトデコムとの共同事業であるとの認識を持っていた。その後,カブトデコムの営業が思わしくなくなると,被控訴人は,エイペックスを支配し,同社に多額の融資をしてその存続を図った。
このような事情を考慮すると,本件事業は,被控訴人,カブトデコム及びエイペックスの共同事業と評価でき,被控訴人は共同企業体の一員として,預託金の返還義務を負うというべきである。
(被控訴人の主張)
被控訴人は,カブトデコムの主力銀行として,本件事業の多額の開発資金を一手に融資したため,その回収については,本件事業の完成と会員権販売が成功するか否かが鍵を握っていた。
主力銀行が有力な取引先が行う新規事業に融資する場合,その事業計画や収支計画への助言,取引先の紹介,製品の販売協力,場合によっては人材派遣等の協力も惜しまないものである。本件もこうした,主力銀行と取引先との関係に照らして格別特異なことではなく,それを行ったからといって,被控訴人がカブトデコムグループとの共同事業を行ったと決めつけるのは短絡的にすぎる。
(7) 被控訴人の本件会員権販売主体としての責任又はエイペックスとの関係における法人格の否認に基づく責任の存否
(控訴人らの主張)
被控訴人は,前記のとおり,行内にプロジェクトチームを組織して本件事業計画に当初から参加し,同計画の共同企画者の選定に関わった上,会員権の販売について,購入資金を貸し付ける提携ローンを設定したり,預託金返還債務を実質的子会社であるたくぎん保証に保証させるなど密接な関係を持ち,また,実際の販売活動においては,被控訴人の役員らが積極的に「拓銀が行っている事業である」旨宣伝し,全支店に積極的な会員募集への関与,協力を指示し,被控訴人従業員は,この募集協力の際,被控訴人自身が預託金返還債務を保証しているかのような言動をしたり,保証人であるたくぎん保証は被控訴人と一体であるなどと言ったりして,ことさら被控訴人が保証人であるかのように誤解させた。
また,被控訴人は,本件事業の事業主体であるエイペックスやその親会社であるカブトデコムに融資し,その株式を取得し,これら2社と利益を共通にし,平成5年になると,エイペックスをカブトデコムの傘下から分離独立させ,人事,資本,資金繰りのいずれにおいてもエイペックスを支配下においた。
こうした経緯からすれば,被控訴人は,エイペックスと共同して本件事業を行ったものであるから,本件会員権の会員契約においても,エイペックスと並んでその主体となると解すべきである。被控訴人は,会員権の販売主体として,控訴人らに対し,預託金返還債務を負う。
また,被控訴人は,エイペックスに巨額の融資をしていたが,後に同社をカブトグループから独立させ,被控訴人及びその系列会社でエイペックスを支配できるだけの株式を取得し,被控訴人の従業員を取締役として派遣し,債権者としてエイペックスの破産を申し立てることができる地位を確立し,その経営を完全に掌握したものであるから,本件会員権の販売は被控訴人が自己の事業として行っている旨の説明を受けてこれを信じた控訴人らとの関係では,エイペックスの法人格は否認されるべきであって,この意味においても,被控訴人は,会員契約に基づく責任を負うべきである。法人格否認の法理が適用されるのは,判例にいう法人格の形骸化事例及び濫用事例に限られるものではない。
(被控訴人の主張)
控訴人らが本件会員権の会員契約を締結したのは,エイペックスとの間であり,仮に本件事業が被控訴人とエイペックスの共同事業であったとしても,被控訴人は,エイペックスと別人格である以上,原則として,エイペックスの締結した契約上の権利を取得し義務を負うことはない。
これについて例外が認められるのは,いわゆる法人格否認の法理が適用される場合に限られると解すべきであるが,控訴人らは,いわゆる法人格の形骸化事例の要件である財産の混同等の事情や,法人格の濫用事例の要件である被控訴人の濫用目的について主張立証をしない。
形骸化事例及び濫用事例のほかにも法人格否認の法理が適用され得る余地はあるとしても,安易に適用範囲を拡大すべきではない。
また,控訴人らは,被控訴人がカブトデコム及びエイペックスに多額の融資をしてこれらの株式を取得したり,エイペックスをカブトデコム傘下から独立させ支配したりしたことを挙げ,被控訴人がエイペックスを支配していたことの理由の一つとしているが,これは,控訴人らが入会した後の事情であるから,控訴人らとエイペックスの会員契約上の責任を被控訴人が負うことの根拠とはならない。
(8) 被控訴人についての不法行為の成否
(控訴人らの主張)
ア 民法709条に基づく責任
仮に被控訴人と控訴人らとの間で保証契約又は損害担保契約が成立していないとしても,被控訴人従業員は,被控訴人とたくぎん保証との一体性を前提として,「拓銀が保証する」などと虚偽の事実を告げ,控訴人らにその旨信用させ,本件会員権を購入させたものである。
消費貸借契約において,有力な保証人の有無は取引上重要な事項であることからすれば,かかる事項に関する虚偽告知は,詐欺にあたり,不法行為が成立する。
仮に,被控訴人の従業員が,被控訴人が保証する旨発言していないとしても,銀行の有する公的性格から,一般消費者は銀行に対して信頼をおいていることに照らし,銀行は,保証について取引先に誤解を与えるような言動をしない義務を負うところ,被控訴人の従業員の中には,控訴人らの一部に対し,たくぎん保証は,被控訴人と一体であるとか,被控訴人の一部門であるなどと発言し,十分な法律的知識を有しない購入者をして,被控訴人が保証債務を負うかのように誤信させたものである。
そうした不実表示は,過失による不法行為を構成する。
被控訴人は,たくぎん保証が預託金返還債務の保証債務の履行を余儀なくされたときには,親会社としての被控訴人の信用を維持するためにも,たくぎん保証に融資をするなどして,必ず保証債務を履行させる意思があり,被控訴人の従業員も,その趣旨で前記のような発言をし,控訴人らは必ず保証債務が履行されると信頼して本件クラブに入会したのであるから,被控訴人には,預託金の返還について控訴人らに損害を被らせない旨の保護義務が発生した。
そして,被控訴人は,破産を免れ存続しているにもかかわらず,たくぎん保証の保証債務を肩代りするなどの措置をとらず放置しているのであるから,前記の保護義務に違反する不法行為により,控訴人らに損害を与えたものである。
更に,被控訴人は,争点(2)ア記載のとおり,被控訴人の役員又は従業員もしくはカブトデコム関係者の言動や,被控訴人と本件事業との密接な関わりなどから,本件クラブの預託金返還債務について被控訴人が保証するとの情報が流布しているのを知りながら,これを訂正しなかった。
この情報流布の契機を作ったのが被控訴人自身であることとあわせると,被控訴人には,不作為による欺罔に基づく不法行為が成立するというべきである。
被控訴人は,本件事業計画の立案,遂行において,カブトデコム及びエイペックスとの共同事業又は被控訴人の事業といえるほど関与し,採算を十分に検討しないまま本件事業を進めた。また,被控訴人は,被控訴人が人,物,金のすべての面で支配し,意思決定権も握っていたたくぎん保証に対し,支配力を行使し,同社に保証能力がないことを知りながら保証させた。
そして,被控訴人は,被控訴人が都市銀行として有する信用力を利用し,あたかも本件事業が成功し,万一失敗した場合でも保証能力のある被控訴人が保証するので安心であるかのように装ったか,又は,本件事業の成功があり得ないこと,たくぎん保証に保証能力のないこと,カブトデコムに対する貸付けが不良債権化し被控訴人の事業遂行が困難となることを知り得たのにこれに気付かず,本件会員権が安全であると宣伝し(カブトデコムが安全であるとして販売しているのを容認したことも含む。),控訴人らに本件会員権を購入させた。
したがって,被控訴人は,信義則に反する売り手又は宣伝者として,控訴人らに対し,不法行為に基づく会員権購入代金相当額の損害賠償義務を負う。
イ 民法44条,715条に基づく責任
被控訴人は,昭和62年,事業構造が脆弱なカブトデコムの主力行となり,直接多額の融資をしただけでなく,平成2年2月の第三者割当増資の際,返済能力の不明な株式引受人に対し,取得株式及びカブトデコムのGによる債務保証のみを担保として,多額の株式取得資金を融資するなど,資金の迂回による仮装増資を行い,同社の株価維持及び会社自体の延命を図った。
被控訴人がカブトデコムと一体となり,又は同社と緊密に連携して本件事業計画を推進したのも,このような違法な融資を隠ぺいし,カブトデコムを延命させるための行動の一環である。
これと同時に,被控訴人は,投機的な要素の高い本件会員権について,その危険を消費者に説明せず,被控訴人の信用を利用して安全な商品であるかのように安心させて会員募集することにより,カブトデコムに対する債権の回収困難による損害を,控訴人ら一般消費者に対する提携ローン債権からの回収によって回復しようとしたものである。
このような行為は,一般消費者の犠牲において,被控訴人の損害の回復を図ったものであり,被控訴人の役員又は従業員による正当な業務活動とはいえない違法行為であるから,被控訴人は控訴人らに対し,民法44条,715条に基づく損害賠償責任を負う。
また,前記のとおりのカブトデコムへの融資やエイペックス等関連企業の救済策の継続は,被控訴人の経営をも危うくするものであり,被控訴人のH頭取,I副頭取らの役員は,これを継続すれば自社の破綻,そしてたくぎん保証及びエイペックスの破綻による預託金返還債務の償還不能を来すおそれがあることを認識し又は認識すべきであったから,被控訴人の破綻前にエイペックスの事業を清算し(現に,被控訴人は,平成5年4月,大蔵省銀行局から,本件事業の問題点を指摘され,早期清算を示唆されていた。),たくぎん保証の保証債務を履行させるべきであったのに,当面のたくぎん保証の負担を軽くするためエイペックスの延命を図り,結局控訴人らに預託金返還債務の償還を受けられないようにした。
かかる行為は不法行為を構成し,被控訴人は,控訴人らに対し,民法44条により損害賠償責任を負う。
(控訴人松原商会の主張)
被控訴人は,前記ア,イのとおり,カブトデコムに対する債権の回収のため,控訴人らに対し,自己の信用を強調して本件会員権の購入を勧め,その購入資金を融資したが,被控訴人は,この融資がなされた平成3年3月当時,バブル経済の崩壊により,本件事業計画の採算がとれない旨内部のプロジェクトチームから進言されており,エイペックスの事業が破綻し,たくぎん保証の保証能力を超える債務の履行請求が殺到し,たくぎん保証が破綻することは予測し又は予測し得たから,本件事業を中止すべきであったのに,被控訴人は,これをせず,控訴人らに会員権購入資金を貸し付けたものであり,被控訴人の上記行為は不法行為を構成する。
(被控訴人の主張)
控訴人らは,被控訴人の従業員が,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨発言したと主張するけれども,そうした事実はない。
また,控訴人らは,被控訴人の従業員らが,被控訴人とたくぎん保証とは一体であるとか,たくぎん保証の保証は実質的には被控訴人の保証と同じであると発言したことから,控訴人らは被控訴人との間に保証契約を締結する意思であったと主張する。
しかし,これらの発言は,たくぎん保証が保証人であることを前提としたものであり,社会常識を備えている者であれば,たくぎん保証と被控訴人とが同一人格であると誤解するとは考えられない。
ましてやほぼ全員が営利法人又はその経営者である控訴人らが,この点について誤解することは考えられないから,控訴人らが被控訴人との間で保証契約を締結したと考えることはあり得ない。
これらの発言は,たくぎん保証の保証が,被控訴人の大きな信用力に支えられている旨を説明しているに過ぎず,被控訴人が保証する旨述べたのとは異なる。
控訴人らは,被控訴人の従業員が,たくぎん保証において預託金返還債務の履行ができないときは,あらゆる手段を用いてその債務の履行と同様の結果をもたらす旨の意思を表示したものであるから,これに従った保護義務が生ずると主張するけれども,前記のとおり,被控訴人の従業員は,被控訴人とたくぎん保証との間に緊密な関係があり,たくぎん保証が被控訴人の信用力に支えられていることを説明したに過ぎず,被控訴人の従業員において,上記のような保護義務を負う意思はなかったし,控訴人らにその旨信頼させるような表示もなかった。
控訴人らが主張する事情のもとで,被控訴人が情報を訂正しないからといって不作為による不法行為を構成することはない。被控訴人に訂正義務を負わせるのが不当であることは,前述したとおりである。
また,控訴人らは,運営上問題の多いエイペックスの延命を図り,控訴人らに損害を与えたことが不法行為を構成すると主張するけれども,被控訴人は,平成4年11月のカブトグループに対する金融支援発表当時,これらの企業を倒産させるよりも,金融支援を行う方が,より被控訴人の被る損失を小さく抑え,被控訴人の利益になると考えたのであって,破綻することを認識しながら延命を図ったものではない。
そして,被控訴人は,エイペックスについて,カブトグループの中でも独立運営が可能であると判断し,被控訴人の金融支援により経営を安定させ,控訴人らを含む会員に不安を与えないよう配慮してきたのである。
当時,エイペックスの早期清算の方針はとり得なかったし,エイペックス等への金融支援は前記のような経営判断に基づくものであるから,不法行為を構成しないというべきである。
次に,控訴人松原商会は,平成3年当時,本件事業の採算がとれないことを予測し得たと主張するけれども,当時はバブル経済の崩壊の予兆はあったものの好況下にあり,エイペックスの破綻を予測する者はなかった。
確かに平成5年6月の本件クラブ開業当時は,エイペックスの営業収支は悪化していたが,被控訴人は,エイペックスに金融支援を続け,平成9年7月には改善の兆しがみえたところ,被控訴人の経営破綻という不測の事態により破産に陥り,かつ,たくぎん保証も破産したことにより,控訴人らに対する預託金返還債務の償還が不能となったのである。
預託金の償還不能は,本件事業の不採算性ゆえでなく,被控訴人の破綻という事後的,偶発的事由によるものであって上記控訴人の主張は根拠がない。
(9) 被控訴人の説明義務違反の有無
(控訴人らの主張)
被控訴人は,本件会員権販売に携わっていた担当者(被控訴人の従業員も含む。)が「拓銀が預託金返還債務を保証している会員権だ」「万一の場合,拓銀がたくぎん保証に融資をしてくれるから,預託金の返還は心配ない」などのセールストークを用いて本件会員権を販売していること,購入者も,被控訴人が預託金返還債務を保証する旨信じて本件会員権を購入していることをそれぞれ知りながら,これを訂正することなく放置した。
控訴人らの中には,被控訴人の従業員にその趣旨を確認した者もいたのに,被控訴人の従業員は,控訴人らの誤解を解くことをせず,かえって積極的に被控訴人が預託金返還債務について責任を持つ,あるいは被控訴人が付いているから大丈夫だなどと述べ,控訴人らを安心させて本件会員権の購入を決断させた。
被控訴人は,顧客が誤った情報によって契約の選択の自由が侵害されていることを十分に予見していたから,自ら誤った情報を提供してはならないのはもとより,顧客の有する誤った情報を放置することなく訂正するなどして,正しい情報を提供すべき義務があった。
被控訴人は,当該情報提供義務を怠り,控訴人らに対し,預託金の返還が受けられない損害を与えた。
(被控訴人の主張)
 争う。
(10)錯誤無効
(控訴人松原商会の主張)
控訴人松原商会は,本件会員権の入会金及び預託金の支払に充てるため,被控訴人の提携ローン契約により3500万円を借り入れたが,その際,被控訴人の担当者から,預託金返還債務2800万円は,被控訴人の子会社であるたくぎん保証が保証するので,債務不履行となることは絶対になく,永続的に本件クラブを利用できる旨説明されたため,これを信頼していたところ,エイペックス及びたくぎん保証の破産により,本件クラブのサービスも預託金返還債務の返還も受けられなくなった。
本件クラブ会員権の販売は,被控訴人自身の事業であることから,会員権の販売と提携ローンの実行は不可分一体と考えるべきであるが,控訴人松原商会は,かかる事情を契約当時に知っていれば,契約を締結することはなかった。
これは,いわゆる動機の錯誤にあたるけれども,被控訴人は,自ら前記のとおり説明し,控訴人松原商会の動機を知っていたのだから,控訴人松原商会と被控訴人の間のローン契約は,要素の錯誤により無効である。
したがって,被控訴人は,控訴人松原商会に対し,不当利得に基づき,3500万円を限度として支払済みのローン割賦金を返還すべきである。
(被控訴人の主張)
控訴人松原商会と被控訴人の間の,提携ローンによる金銭消費貸借契約は,エイペックスとの会員権契約とは別個に,その購入資金調達の一手段として締結されたものであり,購入資金が実際に貸し付けられた以上,目的は達成されるから,動機の錯誤の問題は生じない。
会員権契約において,預託金が必ず返還される旨の錯誤があったとしても,提携ローン契約は影響を受けない。
被控訴人は,前記のとおり,自社の信用維持のためにも,重要な関連会社であるたくぎん保証を支援し,絶対につぶさないとの経営姿勢をとってきており,たくぎん保証が控訴人らに保証債務の履行を迫られた場合には,その支払資金を被控訴人が融資する予定であった。
したがって,控訴人松原商会が提携ローン契約を締結した平成3年当時,将来被控訴人の経営が破綻し,たくぎん保証が破産して保証債務の弁済資金に不足を来すとは,誰も考えていなかった。ローン契約の締結当時において,控訴人松原商会において,意思表示と内心との不一致すなわち錯誤はない。
(11)被控訴人の契約補助者としての責任及び契約準備段階における義務違反に基づく責任
(控訴人らの主張)
被控訴人は,たくぎん保証の本件会員権購入者との間における契約交渉に積極的に介入し,その過程において,たくぎん保証の保証能力についても,消極的事情を告げず又はたくぎん保証の保証能力を取り繕う説明をするなどしていたところ,こうした行動をとった被控訴人は,そうした被控訴人の行動に信頼して本件会員権を購入した控訴人らに対し,たくぎん保証と同様の契約責任(保証責任)を負うべきである。
また,被控訴人は,たくぎん保証の保証能力について疑問を抱かせる事実を隠した上で,たくぎん保証の保証能力について「拓銀と実質的に同一」とか「拓銀がバックアップしているから大丈夫」とか「拓銀の100パーセント子会社」であるといった説明をしていたところ,こうした被控訴人には,本件会員権を購入した控訴人らに対し,契約締結上の過失責任が認められ,被控訴人は,控訴人らに対し,たくぎん保証が負う預託金返還債務と同等額の損害賠償責任を負うべきである。
(被控訴人の主張)
控訴人らの上記主張は争う。
(12)被控訴人の信義則に基づく預託金返還義務又は損害賠償義務
(控訴人ら(ただし,控訴人松原商会を除く。)の主張)
これまでの主張にかかる事情を総合すると,被控訴人は,信義則に基づいて,控訴人らに対し,控訴人らが本件会員権購入時に支払った預託金の返還を履行するか,あるいは,控訴人らが本件会員権購入によって被った損害を賠償すべき責任を負うべきである。
(被控訴人の主張) 
控訴人らの上記主張は争う。なお,控訴人らの上記主張は,抽象的に信義則違反をいうだけであって,具体的な責任根拠とはなり得ないというべきである。

第3 判断

本件において,控訴人らの主張にかかる被控訴人の責任原因の法的構成は多岐にわたるところ,その根拠として主張される事実には共通する部分が多く認められるので,以下においては,控訴人らが各法律構成の根拠として主張する事実のうち,共通する事実群についてまず判断し,その上で,個々の争点について検討を進めることとする。
1 控訴人らがいずれも本件会員権の購入を申し込んだ時期である平成2年から平成3年中における,被控訴人による本件事業及び本件会員権販売についての具体的な関与実態について
(1) 前記事案の概要認定の事実並びに甲第41号証ないし第45号証,第61号証,第106号証ないし第116号証,乙第104号証,原審における証人G(証拠保全),証人Jの各証言及び以下に各掲記の証拠によれば,次のとおりの事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
ア 被控訴人は,昭和62年3月ころから,カブトデコムの主要取引銀行として,カブトデコムに対する事業資金の継続的な融資を積極的に行うようになり,カブトデコムが企画検討中であった本件クラブについての本件事業計画についても,平成元年中に,計画の立案・資金手当て等について積極的に関与し,同年10月16日開催の投融資会議において,本件クラブの事業主体となるエイペックスに対する207億円の授信及び当時想定されていた本件会員権販売総額515億円の80パーセントに相当する預託金についての保証をすること,ただし,具体的な保証の方法については,旧大蔵省との折衝結果をまって決定することを内定(内認)した。
そして,こうした被控訴人による積極支援体制については,同月22日の地元新聞(北海道新聞)の一面トップで「洞爺湖畔でリゾート開発 カブトデコム 総事業費1000億円8年計画 拓銀が全面支援」といった見出しで報道された。
(甲21,24,30の21,90ないし92)
イ 被控訴人は,平成2年3月30日,エイペックスとの間で,本件会員権購入者に対する提携ローンを被控訴人が設定すること,当該提携ローンを利用した本件会員権購入者の被控訴人に対する返還債務について,エイペックスが保証する旨の契約を締結し,同年4月から上記提携ローンの新規取扱いを行内に通知した(乙2の1,106)。
なお,同通知には,上記提携ローンに延滞が発生した場合の債権管理方法として,提携先であるエイペックスに代位弁済請求することが明記されていた。
また,被控訴人は,同年3月,被控訴人の札幌駅前支店長をカブトデコムに役員として派遣し,カブトデコムは,同人を専務取締役として迎え入れた(甲35)。
ウ エイペックス及び本件会員権販売の総代理店であったカブトデコムは,上記提携ローンが新設された平成2年3月ころから,いわゆる縁故会員権としての賛助会員権の販売を開始した。賛助会員権の種類は,第1次賛助会員権(預託金1600万円,入会金400万円)と第2次賛助会員権(預託金2000万円,入会金500万円)で,これらについては,平成2年中にほぼ完売されたが,これらの賛助会員権販売当時に発行された預託金証書(「会員資格保証金証書」)には,預託金返還債務について,被控訴人又は被控訴人の関連会社が保証する旨の記載はなかったが,賛助会員権購入者に対しては,エイペックス又はカブトデコムから,預託金元金償還保証書を後日所要の事務手続き終了後発行する旨の平成2年4月付け書簡が交付されていた(乙66)。
エ 被控訴人は,平成2年夏ころまでに,旧大蔵省との折衝を終え,たくぎん保証による本件会員権購入者に対する保証についての同省の了解をとりつけ,同年12月までに具体的な預託金保証方法についての内部検討を終えた。
また,同月25日開催の投融資会議において,たくぎん保証による預託金保証が承認され,たくぎん保証が本件会員権の預託金返還債務を保証することになった事実については,同月27日の地元新聞(北海道新聞)で報道された。なお,同会議までには一般向けの正会員権募集総口数を1430口とし,賛助会員権を含めた全会員権の販売総額を665億円とすること,その販売総額のうち預託金総額に相当する532億円を上限として,たくぎん保証が会員権購入者に対して保証すること,たくぎん保証が徴求する保証料率を年0.4パーセントとすること,被控訴人は,たくぎん保証との間でコンサルティング契約を締結した上で,たくぎん保証からコンサルティング料として,たくぎん保証の保証料収入の4分の3を取得すること及び先に被控訴人とエイペックスとの間で締結されていた提携ローン設定契約中の1会員権当たりの融資限度額をそれまでの2500万円から3500万円に変更することなどの所要の調整手続きは既に整っていた。
そして,平成3年1月4日には,エイペックスとたくぎん保証との間で,たくぎん保証がエイペックスの本件会員権購入者に対する預託金返還債務を532億円を上限として保証する旨の契約が締結された。
こうした経緯を経て,エイペックス及びカブトデコムは,平成3年1月から本件クラブの第1次正会員募集を正式に展開し,本件クラブの会員募集案内用パンフレット中には,たくぎん保証が本件会員権の預託金返還債務を保証する旨明記するとともに,被控訴人取扱いにかかる本件会員権購入者専用ローン契約の案内書を頒布するなどした。
また,本件会員権販売担当者用のマニュアル中には,本件会員権の預託金証書の裏面に提携金融機関であるたくぎん保証の保証を証する印が押捺される旨記載されていた。
(甲9,10,16ないし18,30の9,30の20ないし24,乙1,2の2,3,68)
オ 被控訴人は,平成3年3月1日付けで,本件事業については,被控訴人が企画立案段階から取り組み,たくぎん保証が預託金返還債務を保証するなど,深く関与してきており,被控訴人の営業にも大きな影響を与えるものであるとして,全支店長宛に本件会員権についての販売協力をすべきこと及び会員権販売の成約1件につき175万円を支店のみなし手数料として各支店の実績に加算して評価する旨の指示文書を発出したほか,同月中に開催された各支店ブロックごとの支店長会議で本件事業の説明を行った(甲22の1ないし3,30の13の1・2,30の19)。
カ 被控訴人は,本件会員権の第1次正会員総募集口数880口のうち99口を被控訴人が販売する予定で購入者の勧誘等を行ったが,販売予定期間中の成約実績は,平成3年12月10日現在で84口(最終実績は98口)であった(甲22の1ないし3,53の1・2,94)。
(2) 以上の事実が認められるところ,これらによれば,被控訴人の本件事業に対する関与は,銀行による融資先への金融支援を超える融資先の営業そのものについての積極的な支援・協力を行っていたことが明らかに認められるものの,これらの事実から,本件事業の法律上の事業主体も被控訴人であったとか,あるいは,エイペックス及びカブトデコムとの共同事業に被控訴人も事業主体として加わっていたとまで評価することはできないというべきである。
また,被控訴人は,本件事業を成功させるために,できうる限りの支援・協力をすることを検討し,その過程において,本件会員権の販売を確保するために,被控訴人による預託金返還債務の保証についても検討したことが認められるものの,最終的には,たくぎん保証による保証を選択し,被控訴人による保証の方法は採られなかったことが認められる。
すなわち,上記認定の各事実からは,被控訴人は,本件事業に対して,経済的に強力な支援と協力を注いだが,本件事業及びそれに付随する権利義務関係の直接の主体として行動してはいなかったし,本件会員権の販売についても,被控訴人自体が本件事業の経営・営業の主体となって,本件会員権の販売に関与していたとまでは認められない。
また,本件会員権の預託金返還債務について,被控訴人が保証することはもとより,被控訴人の関連会社が保証することは,本件会員権の商品としての信用性を格段に増強させるものであったし,最終的に,たくぎん保証が預託金返還債務を保証することになったことについては,被控訴人のグループ会社に対する支配・影響力なしには実現できなかったであろうことは明らかであるものの,こうした被控訴人の関与の仕方は,カブトデコム及びエイペックスによる本件事業を成功させることによって,被控訴人の金融利益を維持・拡大させることを目的とした支援・協力であったとはいい得ても,これをもって,被控訴人自体が,法律上の保証責任の主体として本件会員権の預託金返還債務を保証したと認めることはできない。
もっとも,被控訴人にとって,たくぎん保証は,そもそも,被控訴人の融資先に対する債権の延滞等に伴う債権回収上の危険を軽減するために設立された会社であったし,たくぎん保証の責任負担能力についても,つまるところは被控訴人の信用によって裏付けられていたものと認められ,また,被控訴人のたくぎん保証に対する実質的な支配力を背景とすることなしに,たくぎん保証による本件会員権の預託金返還債務に対する保証はあり得なかったものと認められるのであるが,こうした銀行を中心とした各種金融関係関連会社を当該銀行とは切り離して独立の法人として設立し,銀行の融資先債権に対する保証業務や債権回収業務及び債権保全業務等を運営させること自体は何ら違法・不当なことではない。
ただ,当該関連会社が,もっぱら,銀行の責任財産に対する執行の回避等を目的として設立されたとか当該銀行が支配力を不当に行使して,自行の負担すべき法律上の責任のみを関連会社に押し付け,かつ,当該関連会社の責任財産についての手当を全く行わないといった特段の事情が認められるような場合には,当該関連会社の法人格の独立性を否定すべき余地があるというにとまる。
これを本件について見るに,被控訴人が自己の責任をもっぱら回避する目的で,たくぎん保証に本件会員権の預託金返還債務について保証をさせたと認めることはできず,むしろ,被控訴人としては,たくぎん保証に対する必要な資金の手当てを予定した上で,たくぎん保証に上記保証をさせたと認められ,ただ,被控訴人自体が経営に破綻を来したことから,たくぎん保証に対する資金手当をなしえなくなったにすぎないというべきである。
そして,この場合の被控訴人としての関連金融会社であるたくぎん保証に対する法律上の責任については,あくまでも両者間で交わされていた求償約束その他の責任分担約定等によって規律されるべきでことがらであって,両者の人格的独立性を無視し,経済的関連性等にのみ依拠して,責任の一体性を強いることはできないといわざるを得ない。
この点につき,控訴人らは,被控訴人とたくぎん保証との経済的一体性をいうけれども,企業グループとしての経済的関連性や一体性をいうだけでは,たくぎん保証の法人格の独立性を否定するには不十分であり,他に,法人格を濫用していると認めるに足りる具体的事情がさらに認められることを要するといわざるを得ない。
そして,本件全証拠によっても,たくぎん保証について,その法人格の独立性を否定すべき的確な事情は見当たらない。
また,本件全証拠によっても,被控訴人が,平成2年から平成3年当時にエイペックスやカブトデコムに対して,金融支援・協力以上の経営支配を及ぼしていたとか,本件事業及び本件会員権の販売について,被控訴人自体の計算において,被控訴人のために販売活動をしていたと認めることもできない。
したがって,被控訴人が,本件事業の責任主体であったとか,本件会員権の販売主体であったとか,たくぎん保証による本件会員権の預託金返還債務に対する保証は,被控訴人による保証と異ならないものというべきであるといった前提評価に基づく控訴人らの争点(1),(4),(5),(6)及び(7)の主張は,いずれも理由がない。
(3) 次に,控訴人らは,被控訴人がカブトデコムに対し,被控訴人の設定した提携ローンについて,その契約取次事務をカブトデコムに委託していたところ,控訴人らは,カブトデコムが被控訴人を代理して本件会員権の預託金返還債務についての保証契約又は損害担保契約を締結する権限を有するものと信じた旨主張するが,平成2年12月より前の時点で被控訴人が保証することが被控訴人によって正式に公表されたことなどなく(平成2年中に作成されたと思われる「エイペックスリゾート洞爺 賛助会員権募集要項(案)」(甲15)は,文字通り案文であって,正規に頒布・公表されたものではない。),平成2年12月27日の新聞報道によって公表された本件会員権の預託金返還債務に対する保証人はたくぎん保証である旨明記されていた(乙1)ことに照らすと,控訴人らの主張する上記信頼の前提自体が成り立たないというべきであるから,争点(2),(3)及び(9)における控訴人らの主張は,いずれも理由がない。
2 次に,控訴人らは,仮に,たくぎん保証の法人格の独立性を否定することはできないとしても,被控訴人の支店長や役員による具体的言動等が控訴人らをして,本件会員権の販売を被控訴人自身が行っていたものと信頼させ,あるいは,控訴人らをしてたくぎん保証と被控訴人とが異なることについての認識を誤らせた旨主張するので,以下においては,主として,控訴人ら各人の本件会員権購入時の事情について,さらに検討を進めることとするに,以下の各項に掲記の証拠(枝番号を含む。)によれば,控訴人ら各人の本件会員権購入時の事情として,次のとおりの事実が認められ,これを覆すに足りる証拠はない。
(1) 控訴人Aについて(甲A1の1,乙4,原審における証人K)
ア 控訴人Aは,平成3年1月ころ,同人の父から本件会員権の購入を勧められた。
控訴人Aの父は,当時,カブトデコムグループと取引のあった会社に勤務していたことから,本件会員権の販売に協力していたため,本件会員権の販売情報に早くから接し,控訴人Aに対し,第1次賛助会員権の購入を勧めた。
控訴人Aは,同年3月18日ころ,本件クラブの第1次賛助会員権の購入(購入価格は,入会金400万円及び保証金1600万円の合計2000万円)を申し込み,同年4月9日,被控訴人の川沿支店で提携ローンの手続をとった。同日付けで発行された会員権資格保証金証書(以下「本件預託金証書」という。)の裏面には,保証金預託額1600万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人Aは,本件会員権の購入に際して,被控訴人の石山支店の支店長から,本件会員権の預託金返還債務については被控訴人が保証するとの説明を受けた旨陳述する(甲A1の2の1)が,同陳述部分は,本件預託金証書の裏面に,上記のとおりたくぎん保証による保証文言が明記されていたことに照らし,にわかに信用することはできない。
すなわち,控訴人Aにとって,2000万円もの資金を要するリゾート会員権の購入に当たって,預託金償還の安全性が保証されるべきことが最大の関心事であったことは十分に首肯することができるものの,そうであれば,なおさらのこと,本件預託金証書の記載に無関心であったり,その記載内容と同人の認識とが整合していないことを放置することは不自然である。
しかるに,控訴人Aは,平成10年ころまで,本件預託金証書の記載について被控訴人又はたくぎん保証に質した形跡が見当たらない。
この点について,控訴人Aとしては,上記被控訴人の支店長から受けた説明で,被控訴人とたくぎん保証とを一体視していたというのであるが,それは,たくぎん保証が被控訴人のグループ会社であるということに対する信頼にとどまり,被控訴人が保証したとまで断じるには不十分であるといわざるを得ず,他に,控訴人Aに対して,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務
を保証したと認めるに足りる証拠はない。
ウ また,以上の事実及び検討の結果に照らすと,控訴人Aが本件会員権を購入した当時に,被控訴人の支店長が,本件会員権の預託金返還債務を保証するのが被控訴人であるとまで告げなければならない必要性や動機は見出せず,その説明の内容としては,被控訴人の傘下に属するたくぎん保証が保証するので安心してほしいというにとどまり,被控訴人が保証責任を負担するとの説明をしたと認めるべき特段の事情も見当たらない。
(2) 控訴人耕仁会について(甲A2の1,乙5,72,原審における証人L)
ア 控訴人耕仁会は,かねてから被控訴人との間で預金等の取引関係があったところ,被控訴人の琴似支店支店長からの勧誘を受けて,平成3年3月29日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,上記購入代金全額を支払った。控訴人耕仁会に対して発行された同年6月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人耕仁会の事務局長及び代表者は,本件会員権の購入に際して,被控訴人の琴似支店の支店長から,本件会員権の預託金返還債務については被控訴人が保証するとの説明を受けた旨陳述する(甲A2の2,原審における証人L)が,同陳述部分は,本件預託金証書の裏面に,上記のとおりたくぎん保証による保証文言が明記されていたことに照らし,にわかに信用することはできないことは,前記控訴人Aについて判示したところと同様である。そして,控訴人耕仁会についても,他に,被控訴人が,控訴人耕仁会に対して,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証したと認めるに足りる証拠はない。
ウ また,以上の事実及び検討の結果に照らすと,控訴人耕仁会が本件会員権を購入した当時に,被控訴人の支店長が,本件会員権の預託金返還債務を保証するのが被控訴人であるとまで告げなければならない必要性や動機は見出せず,その説明の内容としては,被控訴人の傘下に属するたくぎん保証が保証するので安心してほしいというにとどまり,被控訴人が保証責任を負担するとの説明をしたと認めるべき特段の事情も見当たらない。
(3) 控訴人山田硝子について(甲A3の1,乙6,原審における証人M)
ア 控訴人山田硝子は,平成2年9月又は同年10月ころ,カブトデコムの取引先から本件クラブ施設の内装工事受注のためには,本件会員権を購入することが必要であるとか,将来におけるカブトデコム関連工事の発注を優先的に受けるためにも本件会員権を購入すべきである旨の勧誘を受け,平成3年3月5日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同月26日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人山田硝子に対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人山田硝子の札幌支店担当者は,被控訴人の行員から,本件会員権の預託金返還債務の保証について説明を受けたことはなく,また,上記本件預託金証書についても,その内容を確認したことはなかった。
(4) 控訴人シーエスコーレルについて(甲A5の1,乙8,73,原審における控訴人シーエスコーレル代表者)
ア 控訴人シーエスコーレルは,かねてから被控訴人との間で預金等の取引関係があったところ,平成3年6月ころ,被控訴人の伏古支店支店長から本件会員権の購入を勧誘され,同月25日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人シーエスコーレルに対して発行された同年8月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人シーエスコーレルが本件会員権を購入する際における,被控訴人の伏古支店長の説明は,本件会員権の購入資金は,被控訴人が全額融資し,本件会員権の預託金返還債務についてはたくぎん保証が保証するというものであった。
(5) 控訴人ファミリーサービスについて(甲A7の1,乙10,89,原審における証人N,控訴人ファミリーサービス代表者)
ア 控訴人ファミリーサービスは,平成3年3月ころ,被控訴人の伊達支店の課長から本件会員権の購入を勧誘され,同月25日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人ファミリーサービスに対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,上記被控訴人の伊達支店の課長は,控訴人ファミリーサービスの代表者に対し,たくぎん保証が本件会員権の預託金返還債務を保証し,被控訴人がたくぎん保証をバックアップする旨説明した(しかし,たくぎん保証と被控訴人とが一体であるとか,たくぎん保証が被控訴人の一部門に過ぎないといった説明をしたと認めるに足りる証拠はない。)。
(6) 控訴人太陽ルートサービスについて(甲B2の1,乙12,91,原審における証人O,控訴人太陽ルートサービス代表者)
ア 控訴人太陽ルートサービスは,平成3年4月ころ,被控訴人の南郷通支店の課長補佐から本件会員権の購入を勧誘され,同月24日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同年6月ころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人太陽ルートサービスに対して発行された同年6月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,上記被控訴人の南郷通支店の課長補佐は,控訴人太陽ルートサービスに対し,本件会員権の預託金返還債務についてはたくぎん保証が保証する旨説明したが,被控訴人が実質的に保証するとか,たくぎん保証と被控訴人とは同一であるといった説明はしなかった。
(7) 控訴人カネトモについて(甲B7の1,乙17,79,原審における証人P,控訴人カネトモ代表者)
ア 被控訴人の東屯田支店の支店長は,平成3年6月又は同年7月ころ,本件クラブのパンフレットを持参して,控訴人カネトモに対し本件会員権の購入を勧誘したが,控訴人カネトモから,既に取引先から本件会員権を購入する予定である旨告げられたので,勧誘することを諦めたが,被控訴人の提携ローンの利用を勧めた。控訴人カネトモは,同年7月24日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同年8月6日ころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人カネトモに対して発行された同年9月2日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,上記被控訴人の東屯田支店の支店長は,控訴人カネトモに対し,たくぎん保証が本件会員権の預託金返還債務を保証する旨の説明はしたものの,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証する旨の説明はしておらず,ただ,上記支店長としては,たくぎん保証が保証するということは,被控訴人のブランドとして信用されたという認識でいた。
(8) 控訴人高橋測量について(甲B8の1,乙18,71,92,丙ツ1,原審における証人Q,控訴人高橋測量代表者)
ア 控訴人高橋測量は,平成3年3月26日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同月29日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人高橋測量に対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人高橋測量代表者は,平成2年の秋ころ,被控訴人の西野支店支店長及び行員から本件会員権の購入を勧誘され,その際,同支店長から被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証する旨の説明を受けたと陳述する(甲B8の2,原審における控訴人代表者)が,こうした趣旨の説明をしたことを否定する同支店長及び行員の各陳述(乙71,92,原審における証人Q)に照らし,にわかに信用することはできない。
(9) 大同建材について(甲B10の1,乙20,85,105の1・2,原審における証人R,S(大同建材代表者))
ア 大同建材は,平成3年12月3日ころ,カブトデコム関連の会社から向こう3年間に4億円の資材発注を受ける約束で本件会員権の購入を勧誘され,同月4日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。
大同建材に対して発行された平成4年2月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,大同建材代表者は,平成3年11月又は同年12月ころ,被控訴人の小樽支店の営業部長から,本件会員権の購入を勧誘され,その際,たくぎん保証と被控訴人とを実質的に同一視していたとか,本件預託金証書裏面の記載について大して気にしていなかった旨陳述する(甲B10の2,原審における証人S(大同建材代表者))が,上記被控訴人小樽支店の営業部長が,たくぎん保証と被控訴人とが同一であると説明した事実を認めるべき証拠はない。
(10)控訴人見附重機について(甲C1の1,乙22,丙イ2,原審における控訴人見附重機代表者)
ア 控訴人見附重機は,平成3年3月ころ,取引先から本件会員権の購入を勧誘され,同年4月2日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同月12日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人見附重機に対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人見附重機の代表者は,本件預託金証書を受領した後,被控訴人の清田支店に対し,たくぎん保証による保証について確認したところ,同支店の担当者からたくぎん保証と被控訴人とは一心同体であるとの説明を受けた旨陳述する(原審における控訴人見附重機代表者)が,その説明の具体的内容自体が不明であるし,同説明のみを捉えて,被控訴人が控訴人見附重機の購入した本件会員権の預託金返還債務を保証したと解するには不十分である。
(11)控訴人丸北三建について(甲C2の1,乙23,81,丙ロ2,原審における控訴人丸北三建代表者)
ア 控訴人丸北三建は,平成3年春ころ,被控訴人の札幌駅前支店の支店長らから本件会員権の購入を勧誘され,同年8月12日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同年9月3日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。
控訴人丸北三建に対して発行された同年10月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。 
イ ところで,控訴人丸北三建の代表者は,本件会員権購入の動機として,工事受注の期待と被控訴人による本件会員権の預託金返還債務についての保証を挙げ,本件預託金証書裏面の記載については,被控訴人の経営が破綻するまで気づかなかった旨陳述する(原審における控訴人丸北三建代表者)が,本件会員権購入の動機の重要な要素であった保証人の記載について注意を払っていなかったというのは,にわかに信用できない。
また,上記被控訴人の支店長らが,控訴人丸北三建に対して,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証する旨の説明をしたと認めるべき的確な証拠はない。
(12)控訴人松原商会について(甲ロ1の1,2の1・2,4,乙42,原審における控訴人松原商会代表者)
ア 控訴人松原商会は,平成3年2月ころ,取引先から本件会員権の購入を勧誘されて,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人松原商会に対して発行された同年3月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人松原商会の代表者は,本件会員権の購入に際し,被控訴人の月寒支店で本件会員権の預託金返還債務について問い合わせたところ同支店の担当者から「うちが責任を持ちます」との回答を得た旨陳述する(甲ロ4,原審における控訴人松原商会代表者)が,仮に被控訴人の月寒支店の担当者において,上記回答をしたとしても,同回答のみを捉えて,被控訴人が控訴人松原商会の購入した本件会員権の預託金返還債務を保証したと解するには不十分である。
(13)控訴人デンタル・ラボについて(甲A8の1,乙26,67,78,原審における証人T,控訴人デンタル・ラボ代表者)
ア 控訴人デンタル・ラボは,カブトデコムの代表者であったGから本件会員権の購入を勧誘され,平成2年9月ころ,本件クラブの第1次賛助会員権の購入(購入価格は,入会金400万円及び保証金1600万円の合計2000万円)を申し込み,同月28日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。
控訴人デンタル・ラボに対して発行された当初の同月28日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額についての償還を保証する旨の記載はなされていなかったが,平成3年3月以降に差し替えられた本件預託金証書の裏面には,保証金預託額1600万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人デンタル・ラボの代表者は,本件会員権を購入した際に,被控訴人の当時の副頭取や札幌駅北口支店の支店長から,本件会員権の預託金返還債務について,被控訴人が保証するとの説明を受けたとか,本件預託金証書の裏面をよく確認していなかった旨陳述する(甲A8の2,原審における控訴人デンタル・ラボ代表者)が,平成2年9月当時は,本件会員権の預託金返還債務について具体的に誰が保証するかについて決まっていなかったのであり(乙66,67),この時点で,被控訴人の役員や支店長が上記説明をしたというのは,にわかに信用できないし,また,本件預託金証書の裏面をよく確認しなかったというのは,その重要性に鑑みにわかに信用することができない。
(14)控訴人丸清基礎について(甲A10の1,乙28,原審における証人G(証拠保全),控訴人丸清基礎代表者)
ア 控訴人丸清基礎は,カブトデコムの代表者であったGから見返り工事発注の約束で,本件会員権の購入を勧誘され,平成3年3月26日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同月29日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人丸清基礎に対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人丸清基礎の代表者は,本件会員権の購入に際し,カブトデコムの代表者であったGから本件会員権の預託金返還債務については被控訴人が保証するとか,被控訴人の役員から「拓銀が全面的にバックアップする」との説明を受けたことから,本件預託金証書裏面の保証記載についてもたくぎん保証と被控訴人とを同一のものと認識していた旨陳述する(原審における控訴人丸清基礎代表者)が,上記説明だけから,本件預託金証書の裏面の記載にもかかわらず,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証したということはできない。
(15)控訴人エスアイ工業について(甲B14の1・2,乙31,84)
ア 控訴人エスアイ工業は,平成2年の暮れころ,被控訴人の豊平支店の副支店長から本件会員権の購入を勧誘され,平成3年3月26日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人エスアイ工業に対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人エスアイ工業の代表者は,本件会員権を購入した際に,被控訴人の豊平支店の副支店長から,本件会員権の預託金返還債務について,被控訴人が保証するとの説明を受けた旨陳述する(甲B14の2)が,本件預託金証書の裏面の記載に照らし,にわかに信用することができない。
(16)控訴人中和石油について(甲チ1の1・2,2,乙57,原審における控訴人中和石油代表者)
ア 控訴人中和石油は,平成3年4月ころ,カブトデコム及び被控訴人の西支店の担当者から本件会員権の購入を勧誘され,同月30日,本件クラブの第1次賛助会員権の購入(購入価格は,入会金400万円及び保証金1600万円の合計2000万円)を申し込み,そのころ,代金を支払った。
控訴人中和石油に対して発行された同年7月1日付けの本件預託金証書の裏面には,保証金預託額1600万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人中和石油の本件会員権購入に際して,被控訴人から本件会員権の預託金返還債務について被控訴人が保証する旨の説明はなく,また,控訴人中和石油の代表者もたくぎん保証と被控訴人が同一であるとは認識していなかった。
(17)控訴人丸吉ナカタについて(甲ル1の1・2,2,乙60,原審における控訴人丸吉ナカタ代表者)
ア 控訴人丸吉ナカタは,平成3年3月ころ,カブトデコムの代表者であったGらから本件会員権の購入を勧誘され,同月25日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,そのころ,代金を支払った。控訴人丸吉ナカタに対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人丸吉ナカタの本件会員権購入に際して,被控訴人からの勧誘や本件会員権の預託金返還債務について被控訴人が保証する旨の説明はなかった。
ただ,控訴人丸吉ナカタとしては,上記Gの説明から本件会員権の預託金返還債務については,被控訴人が直接保証することができないため,たくぎん保証が保証することになったにすぎず,保証の実質は同じであると認識していた。
(18)控訴人萬木建設について(甲A11の1・2,乙47,66,67,83,原審における証人U,控訴人萬木建設代表者)ア 控訴人萬木建設の代表者(控訴人B)は,カブトデコム関連会社から派遣されて控訴人萬木建設の代表者に就任した者であるが,平成2年7月ころ,カブトデコムから本件会員権の購入を勧誘され,そのころ,本件クラブの第1次賛助会員権の購入(購入価格は,入会金400万円及び保証金1600万円の合計2000万円)を申し込み,そのころ,代金を支払った。控訴人萬木建設に対して発行された当初の同年8月22日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額についての償還を保証する旨の記載はなされていなかったが,平成3年3月以降に差し替えられた本件預託金証書の裏面には,保証金預託額1600万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人萬木建設の本件会員権購入に際して,被控訴人からの勧誘や本件会員権の預託金返還債務について被控訴人が保証する旨の説明はなく,平成3年3月ころ,控訴人萬木建設の代表者(控訴人B)が,個人で本件会員権を購入する際,被控訴人の釧路新橋大通支店の支店長から本件クラブのパンフレットによる説明を受けたことがあった。
その際,上記支店長は,たくぎん保証が被控訴人の関連会社であるという以上のことは説明しなかった。
(19)控訴人Bについて(甲A11の1・2,甲C8の1,乙49,83,丙ヌ2,原審における証人U,控訴人B本人)
ア 控訴人Bは,平成3年3月18日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同月25日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人Bに対して発行された同年5月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人Bが,個人で本件会員権を購入する際,被控訴人の釧路新橋大通支店の支店長から本件クラブのパンフレットによる説明を受けたことがあったが,上記支店長は,たくぎん保証が被控訴人の関連会社であるという以上のことは説明しなかった。
(20)控訴人りんかい日産建設について(甲A13の1の1ないし9,13の2,乙94ないし96)
ア 控訴人りんかい日産建設は,本件会員権を合計9口購入したが,そのうち,第1次賛助会員権2口と第1次正会員権5口は,いずれも,被控訴人の経営破綻が公表される前に譲り受け,その後の平成10年1月8日に名義書換を行ったものであり,控訴人りんかい日産建設が自ら本件会員権を購入したのは,平成3年4月ころに購入した第1次正会員権2口であった。
控訴人りんかい日産建設に対して発行された各本件預託金証書の各裏面には,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ 控訴人りんかい日産建設の本件会員権の購入は,いずれも,カブトデコムからの勧誘によるもので,また,その他の上記譲り受けは,いずれもカブトデコム関係者からのものであった。なお,控訴人りんかい日産建設の本件会員権購入に際して,被控訴人からの勧誘や保証についての説明があったと認めるに足りる証拠はない。
(21)控訴人Dについて(甲A14の1,乙66,67,97,原審における控訴人D承継人)
ア 控訴人Dは,カブトデコムの役員であった娘婿からの勧誘を受けて,平成2年11月ころ,本件クラブの第1次賛助会員権の購入(購入価格は,入会金400万円及び保証金1600万円の合計2000万円)を申し込み,そのころ,代金を支払った。控訴人Dに対して発行された当初の同年11月28日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額についての償還を保証する旨の記載はなされていなかったが,平成3年3月以降に差し替えられた本件預託金証書の裏面には,保証金預託額1600万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ 控訴人Dの本件会員権の購入に際して,被控訴人からの勧誘や保証についての説明があったと認めるに足りる証拠はない。
(22)控訴人メディタックについて(甲B20の1,乙98,原審における控訴人メディタック代表者)
ア 控訴人メディタックは,平成3年2月ころ,カブトデコムの代表者であったG及び被控訴人の役員(F常務)から本件会員権の購入を勧誘され,同月27日,本件クラブの第1次正会員権の購入(購入価格は,入会金700万円及び保証金2800万円の合計3500万円)を申し込み,同年3月4日,被控訴人との間で提携ローン契約を締結した。控訴人メディタックに対して発行された同年4月1日付け本件預託金証書の裏面には,保証金預託額2800万円について,たくぎん保証が平成15年6月30日を期限として保証する旨の記載とたくぎん保証の印が押捺されていた。
イ ところで,控訴人メディタックの本件会員権の購入に際して,被控訴人からの保証についての具体的な説明があったと認めるに足りる証拠はない。
3 2に認定の事実によれば,控訴人らにおいては,いずれも,たくぎん保証が本件会員権の預託金返還債務を保証するということが,たくぎん保証の保証能力について被控訴人の資金上のバックアップを受けることができることを意味するものと信頼していたことは首肯できるし,そうした信頼に基づいて本件会員権を購入したと認めることはできるものの,被控訴人自体が本件会員権の預託金返還債務を保証したとまでいうべき客観的な事情は見当たらない。
すなわち,先に認定した事実によれば,被控訴人による本件会員権の預託金返還債務に対する保証方法の検討段階から,旧大蔵省とのその点についての折衝,その後の報道内容及び本件預託金証書裏面の記載のいずれをとっても,被控訴人自ら本件会員権の預託金返還債務を保証したとは客観的に認められず,こうした客観的消極事情にもかかわらず,被控訴人の保証責任を認めるに足りる他の適切な客観的事情は見当たらないのであるから,控訴人らにおいて,被控訴人が本件会員権の預託金返還債務を保証したと信ずるに足りる客観的事情は存しなかったといわざるを得ない。
なお,控訴人らは,控訴理由中において,本件預託金証書の記載を注意して読んでいなかったとか,記載内容についてさほどの関心を持っていなかった旨主張するが,控訴人らも主張するように,本件会員権の価格は高額であったし,被控訴人による保証を何よりも重視していたというのであれば,発行された証書に対する上記主張にかかる関心や態度は,いかにも不自然であり,上記主張は採用できない。
また,控訴人松原商会が主張する,動機の錯誤(争点(10))については,被控訴人の説明や被控訴人と控訴人松原商会との共通認識についての前提を欠き理由がない。
4 以上によれば,控訴人らの主張は,争点(8),(11)及び(12)を含めていずれも理由がないといわざるを得ない。
すなわち,これまでに認定した事実からは,被控訴人には,本件事業及び本件会員権販売の法律上の主体となったと認めるべき的確な事情はなく,また,被控訴人について代理・表見代理等に基づく契約責任を認めるに足りる事情も認められない。
さらに,被控訴人について,信義則に基づくたくぎん保証及びエイペックスと同位・同等の契約責任又は不法行為責任等を認めるに足りる事情も認められない。
なお,控訴人らは,被控訴人が,自ら本件事業及び本件会員権販売の法律上の主体となるかのような外観を作出したとして,その撤回又は外観とは異なる事情の説明義務があったとも主張するが,本件に顕れた正規に頒布使用されたパンフレット類(甲9,16ないし18),新聞報道の内容(甲24,乙1),賛助会員宛通知書(乙66,67),本件会員権販売用マニュアル(乙69),被控訴人とエイペックスとの間で交わされた契約書(乙2の1・2),たくぎん保証とエイペックスとの間で交わされた保証委託契約書(甲30の9)及び根抵当権設定契約書(甲30の12)のいずれを見ても,被控訴人が,本件事業及び本件会員権販売の法律上の主体となるような外観を作出したとは認められず,控訴人らの上記主張もまた前提を欠き理由がないといわざるを得ない。
控訴人らは,控訴理由において,被控訴人の役員(F常務)が,平成2年3月ころ,本件会員権購入者の一人に対して「エイペックスの会員権を買いませんか。
拓銀が保証するので大丈夫ですよ。必ず儲かりますよ。」と発言したとか,同役員が平成2年中に,被控訴人の取引先を構成員とする親睦会の席上等で,本件会員権の預託金返還債務を被控訴人が保証するとの発言をしていた旨主張し,こうした主張に沿う証拠(原審におけるV(原審第1事件原告株式会社キムラ代表者)の供述)もあるが,本件会員権の預託金保証債務の保証主体を被控訴人とするか否かを旧大蔵省との折衝結果に委ねることに決定した平成元年10月16日開催の投融資会議以降,被控訴人の役員が,系列会社を含む広い意味での被控訴人グループが預託金返還債務の保証を行う旨を発言することはあり得ても,被控訴人自体が保証をする旨の発言をすることは立場上あり得ず,上記発言がなされたとの被控訴人らの主張は認め難く,他に控訴人らの上記主張を認めるに足りる的確な証拠はない。
5 まとめ
本件における控訴人らの主張は,極めて多岐にわたるものであるが,つまるところは,本件事業に対する被控訴人の協力・支援や関与の態様がいずれも積極的で,たくぎん保証による本件会員権の預託金返還債務の保証についても,被控訴人の信用を背景として実施されたということから,被控訴人の経済的信用力に期待して本件会員権を購入した控訴人らを含む本件会員権購入者らに対する被控訴人の法的責任を追及しようというもので,控訴人らが,本件事業における被控訴人の経済的信用に大きな期待をし,そうした信頼を前提として本件会員権を購入したことは,十分に首肯することができる。
そして,このことは,控訴人らのうちには,カブトデコム関連の見返り工事受注を期待して本件会員権を購入した者がいるとしても,結論を左右しないというべきである。
すなわち,それらの者についても被控訴人の経済的信用に期待した上ではじめて本件会員権を購入したと認めるのが相当である。
しかし,本件事業が被控訴人の信用を背景に推進されたということから,本件会員権の販売をはじめとする個々の取引や契約における責任主体もまた被控訴人となるとは言い難いのであって,個々の取引や契約において表示された権利義務主体とは異なる被控訴人に当該表示された権利義務主体と同様の義務及び責任を認めるには特段の事情が認められることを要するところ,本件全証拠によっても,被控訴人に上記義務及び責任を認めるべき特段の事情を見出すことはできない。
第4 結論
よって,本件控訴は理由がないから,棄却することとして,主文のとおり判決する。

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